ぴゅあぴゅあ盗賊君の恋模様

ぴゅあぴゅあ盗賊君の恋模様

盗賊君(後の情報提供)

それは交流会の後、ブートキャンプでの恋バナでの出来事。盗賊は以前から自らが想いを寄せていた人物の事を考えつつも、カプ厨として推している学生達に話題を振っていた時のことだ。

「それな〜 盗賊はなんかそう言う話はないん〜?」

その想いを寄せていた張本人、伝書桜が自分に話題を回して来た。

(どうしようか、いっその事ここで告る?嫌、無理だぁ)

「…デ…… 無理 そも俺はカプ厨の気質だからね〜 まあいるかいないかはご想像に」

少し彼女の名前が口から溢れつつ、取り繕うのだった。後輩との会話から生まれた術式の可能性に興奮した伝書桜の言葉のあやにドギマギさせられるのは、また別のお話。


(は??!?!!え、伝書桜が、、、?!?!俺のこと?!!!?!///)

またある別の日の事。盗賊は移動時間の間に、いつものように呪術関係者達が使う掲示板を眺めていた。今の話題は、「特級呪詛師 Y談おじさん襲来」。特級の名を冠する呪詛師、ただその名前は一度も聞いたことがなかった。それもそのはず、彼の戦闘力は皆無であるからだ。ではなぜ特級か、術式がそれを物語る。彼の術式は受けた者が例外なく己の性癖や好きな人を曝け出してしまうという凶悪なもので、実際人には言えないような性癖だったり、(周囲にバレバレではあるものの)心の奥に隠し込んでいる想い人を曝け出してしまう後輩など被害はもう形容し難いものであった。

(やっぱアイツ本心はそうじゃん、尊いんだからはよくっつけよ、スクショしとこ)

まあ初めは仲間達を心配しつつ面白おかしい状況のスレを眺め、それと同時にある1人の同級生を想っていた。伝書桜だ。何を隠そう彼女に術式が掛かることを心配しつつ、どこか期待していたのだ。勿論下心というより、好みのタイプの聞き出しと言った感覚で。そして、そこに飛び込んできたレスを、術式を食らいまごうことなく本音のまま叫ぶ彼女の言葉を目撃すると同時に、とてつもない衝撃を受けた。

「ウワァァぁぁぁ!?!?!?!?!?盗賊さんが好きなんです〜〜〜〜〜〜!!!!!あの、ふとした瞬間に見せる紳士な対応にハートキャッチされましたぁぁぁぁ!!!!!!」

「うう〜〜〜〜〜・・・・・・ほんともう・・・カッコ良すぎてむりなんです・・・・いつも通りできてるか心配なんです・・・・・」

(は??!?!!え、伝書桜が、、、?!?!俺のこと?!!!?!///)

この日はこれらの伝書桜の言葉が頭の中で反芻して眠れなかったが、幸せでもあったそう。


その夏は忙しかった。蛆のように呪霊が湧いた。交流会総力戦の後、高専の修理も終わった後の7,8月。等級違いの任務、毎日祓っても祓っても減った様に感じない膨大な呪霊と任務。ただでさえ過労な上、心の癒しでもあった伝書桜や皆とのやり取りも取りづらくなり、心身共に限界を迎えていた盗賊達に、東京校の後輩、灰原の等級詐欺任務による訃報と同じく東京校の同期、夏油の呪詛師認定が飛び込んできた。伝書桜の呪術師になった理由や背景を知り、頑張ろうとしていた矢先の事である。それは、盗賊が自らの悪意のトリガーを引こうとするには充分だった。

(やらなきゃ 俺が全部腐った現状をどうにかしてーーーー)

(大切だからこそ、もう皆が、伝書桜が苦しむのは許せない、領域の分の呪力を構築さんから受け取ってーーーー)

「堕ちる気か?」「貴方まで呪詛師にならないで…」「待ちなさいよ看過できないよ、これ以上、君までなのか」

(ッツ!!! いやでも、もういい 皆が幸せでいられるならーーーー)大事な存在達の言葉に揺らぎつつ、彼はそう自分に言い聞かせた。

「人を辞める覚悟はあるのかって言ってるんだ」「それでも……私は悪意をもって人を殺す姿は見たくないです」「お前の大事な人を置いていくことになるぞ?いいのか?」


「だめ!!!!!!!おいてかないで!!!!!

いかないで!!!!!!!!・・・・・・ここにいてよ・・・・・」


(・・・・・・俺は本当にバカだわ。皆が、伝書桜が一番悲しむ道に進もうとしてた。あいつのバックグラウンドも、トラウマも、想い人も全部知っていたのになぁ)

盗賊は正気に戻った事と感謝、謝罪の旨をスレに書き込んで、その日はそのまま眠りについたのであった。


それから少し経ち、呪霊の発生も落ち着いて来た頃のこと。伝書桜を含めた人たちが夏油がいると思われる宗教団体に無闇に突入しようとしていた。幾ら夏油様術式持ちが着いていても、相手は特級。盗賊は頭によぎった最悪の可能性を振り払いつつ伝書桜を止めるためにレスをした。

「やめて どこかに行かないでって言ったのは伝書桜じゃん 俺が言えた話じゃ無いけど冷静じゃなくなったら死ぬよ 大好きな人が無理するの見たくないよ…」

そう、説得のレスをすることも、過去の経験を突く所も良かった。ただ一つ、もう一つの本音が出て来てしまったことを除いては。

そして、その''本音''に周りが気づくのもまた一瞬であった。

(ああクソ!何でこんなところでカミングアウトしちゃったんだよ!!)

(というか不味い、伝書桜が頭から煙出して倒れた!!!)

後輩の助けもあり、他者への反転が可能な同期の1人、家入の元に連れて行くと

「…ん?これは恋の病ってやつだね王子様のキッスでもしてあげれば?」

そう、こいつも爆弾発言である。

(は?!キキキキキキキキキ//!?!!?/?//¥%♪☆×&@#)

持ち前の真面目さ故思考がオーバーヒートしてしまった盗賊が目を覚ますと、そこには同じく目を覚ました伝書桜ーーー盗賊の初恋であるーーー桜宮礼佳がいた。周りにどれだけの人がいたのだろうか、この時の盗賊にそんな事は関係ない。カメラで撮られている事だけは気になったけれども。

「えっとさ、伝書桜、いや桜宮、こんな形で告るのは少し不本意だけど…

好きだよ。恋愛的にね?盗まれちゃってんだわ、俺の恋心」

ただ真っ直ぐに、相手の名前を呼び、想いを伝える。これがこの時の彼にできた最大の愛情を示す言葉だった。

勿論、自分の初恋の人から好意を示されて錯乱するのは盗賊だけのはずもなく、

「ぷぇ・・・・?え・・・ふぁ・・・・?あ、う、ぇっと・・・・・ Love me? Really?」

焦って英語になったのか戸惑う伝書桜、キースキースと囃し立てる周囲、そこで、彼は彼自身の術式で自分たちを撮っていたカメラを盗みつつーーーーーー


「うん!really!」

満面の笑みで、彼女に口づけをした。



そしてーーーーーー

結婚式と囃し立てられるパーティーに、これからの多く2人と高専の皆との幸せの数々の話はーーーー また、今度のお話。

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